第14回(61th)JJN同窓会 会員学術発表会
令和6年6月8日 土曜日
総会に引き続き 13:30頃~
特別講演 14:00頃~
会場発表・Zoom配信
会場 : 日本医療科学大学 3号棟(311教室)
総会から引き続きZoomでの聴講が可能ですのでたくさんの会員の方々の参加をお待ちしております。Zoom参加は総会参加と同様のID・パスワードです。
会員学術発表抄録
演題1
上腕骨近位端骨折を呈し観血的固定術を施行した症例
~髄内釘干渉による上腕二頭筋腱扁平化について~
日本医療科学大学 保健医療学部
リハビリテーション学科 理学療法学専攻卒業
11期生 茂木涼太
上腕骨近位端骨折の手術療法では、軟部組織への侵襲が少ない髄内釘が選択されることが多い。しかし、リスクとして上腕二頭筋長頭腱損傷などの合併症を引き起こすことがある。今回、上腕骨近位端骨折を呈し、観血的固定術を施行した症例が上腕二頭筋長頭腱損傷を合併したため報告する。症例は60歳代女性。飲酒後、トイレに行こうとした際に階段で転倒し受傷。観血的固定術を施行した後、6週経過した頃から上腕二頭筋長頭腱周囲の疼痛が出現した。疼痛により肩関節可動域は低下。リハビリテーション継続するも肩関節可動域は改善せず。髄内釘と上腕二頭筋長頭腱が干渉している可能性があると医師の判断により抜釘することとなる。抜釘の手術にて上腕二頭筋長頭腱の扁平化が発見された。抜釘後は肩関節可動域改善し、日常生活動作は制限がなくなった。上腕二頭筋長頭腱が扁平化した原因として、上腕二頭筋長頭腱過負荷・肩峰下インピンジメントがあげられる。これらの要因となったものが腱板の筋力低下と考える。骨折の種類・程度により予後予測をし、手術後のリハビリテーションの内容を再考する必要があると考える。
演題2
FPD導入時における病院経営面でのメリットに関する考察
城西放射線技術専門学校2020年度卒業
診療放射線技師 佐々木 平
1.背景
当院のレントゲン室では2023年度よりCR装置からFPDに更新となり撮影業務の大幅な効率化が実現した。しかし同程度の規模の系列病院では未だにCR装置の使用を継続しており、早期にFPD導入を実現させるために本研究に取り組んだ
2.目的
FPD導入に際し、当院の装置の構成でCR装置との差額が約1,000万円だった。この金額が実際に業務のスループットの向上によって妥当な採算性を得られるのか、経営者に対して説明できるようにする。
3.方法
当院の入院患者の術後経過撮影や、骨折・脱臼整復の撮影ルーチンがFPDによって短縮される時間によって、関わったスタッフの時給分の経費節約効果があると考え、1年あたりの時間短縮によって節約できる金額の期待値を計算する。
4.結果
計算の結果、FPDの撮影業務のスピード向上によって得られる経費節約効果は年間で5~10万円程度であり、FPD装置の導入に際の本体の経費に対して採算性が取れる数字ではなかった。
5.考察
FPD導入のメリットとしてスループットの改善以外にも被ばく量や患者負担の低減などの側面からもアプローチする必要があると考えられる。
6.結語
私見ではあるが、FPDに限らず、業務における最新機材の導入は新人・ベテラン間での技術の格差や、男女間の体力差を補うという側面も強いと感じる。それが、労働環境の改善や、患者接遇の向上に繋がるのであれば、技師やコメディカルは、積極的に経営者に対して設備投資を主張していく必要があるのではないか。
演題3
症例報告
日本医療科学大学 保健医療学部 診療放射線学科 2016年卒業
イムス三芳総合病院 作業療法士 戸枝 亮
Ⅰ はじめに
今回胆管癌にて入院となった90歳代男性の症例を担当し、緩和期として介入を行ったため以下に報告する。
Ⅱ 現病歴
X年Y月Z日他院で肝機能障害の指摘あり、Z+3日当院受診。採血、CT施行し胆管癌にてZ+6日入院。Z+7日ERCP施行するも実施困難。Z+8日リハビリ開始。
Ⅲ 作業療法初期評価
醒はクリアでコミュケーションは可能。黄疸あり、MMT上下肢4。基本動作・ADL自立。
Ⅳ 作業療法経過
OTでは離床機会の増加に向け筋力訓練、歩行訓練、ADL訓練を実施。症例より「一度家に帰りたい」と帰宅願望あり、Z+9日自宅退院。
Ⅴ 再入院後経過
Z+24日全身倦怠感、食欲低下あり、看取り目的にて入院。身体機能では前回と変化なし。Z+30日倦怠感が強まり、MMT2〜3と低下、歩行時にふらつきあり症例に合わせて負荷量の調節を行った。その頃より「今後も歩いてトイレに行きたい」とのことで、担当PTと相談し居室内のトイレまでの移動手段の獲得に向け介入を行った。ベッドからトイレまで移動指導やベッドの位置の再検討を実施。Z+61日トイレ内で転倒。Z+69日死亡退院。
Ⅵ 考察
胆管癌にて自宅退院するも再入院となり看取りの症例を経験した。再入院後ではトイレの移動手段の獲得に向け、筋力低下を認める中で動作指導を行い、トイレまでの移動の確保に繋げた。しかしトイレ内での転倒もあり、緩和期では身体機能の評価とリスク管理の重要さを再度感じた。辻1)は緩和ケア主体の時期におけるリハビリの目的として「余命の長さにかかわらず、患者の希望・要望を充分に把握したうえで、その時期におけるできる限り可能な最高のADLを実現すること」としている。症例の希望や要望に合わせて環境の設定や自助具、動作指導などは継続しつつ、変化する身体機能の評価が、緩和ケア期において重要であると考える。
Ⅶ 参考文献
特別講演
臨床検査技師の現在・過去・未来
日本医療科学大学 保健医療学部 臨床検査学科
学科長・教授 伊藤 昭三
2021(令和3)年に日本医療科学大学において80名定員の臨床検査学科が設置されました。日本医療科学大学保健医療学部において第6番目の学科新設です。これにより医師以外のほとんどの医療職の養成学科が揃いました。本学科は今年2024年度が設置完成年度になり、来年2月に初めて学生が国家試験を受験し3月に合格発表を迎え、来年度には臨床検査学科の卒業生がJJN同窓会に入会します。
全国の臨床検査技師養成機関は3年制、4年制、公私合わせて約103施設あり、今回の本学科の設置は93番目の設置になります。国家試験は新卒で毎年4,000名位受験し、3,500名位合格します。合格率は過去10年間で平均88.7%です。日本臨床衛生検査技師会の臨床検査技師の登録人数は全国66,000人(2,020年統計)おり、主に医療関連施設で働いています。臨床検査技師の性別は看護師同様女性が多いのですが、最近は男性も多くなってきています。
仕事内容は臨床検査技師の名称で医師または歯科医師の指示の下で検体検査一分類7で、二次分類では20の検査と生理学的検査を22項目行っています。他の医療職と共に行える行為もあります。職場は主に病院の検査室ですが、全国の病院数は約8,000施設あり、大体は検査室を備えています。そのほか診療所が約10,4000施設ありますが、臨床検査技師を採用しているのは少なく、検査を外注して行っているところが多くあります。また病院関係以外の職場として健診センター、検査センター、体外受精(胚培養士)、治験コーディネーター、動物病院などに展開しています。
今回は、臨床検査・臨床検査技師・資格試験の歴史について、現在行われている検査、最新の機器のPCRや質量分析計などを駆使しての検査について紹介したいと思います。現在新たに医師の働き方改革によるタスクシフト・シェアで臨床検査技師の携わる仕事が増え、多職種とのチーム医療ではどのように関わっているのかも述べたいと思います。更にこの状態の中で出生数が80万人を切る少子化問題、今後働き手の減少に伴い医療職を選択する若年者の減少、2025年問題として団塊の世代が75歳になる後期高齢者の増加など、臨床検査技師がおかれている状況は先行き不透明さが感じられますが、将来に向けて臨床検査はどのように変わっていくかを考察していきたいと思います。
またそのような状況に置かれている本学の臨床検査学科は、今後どのような教育が必要かも探っていきたいと思います。
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